故・シャトレーゼ創業者にシャトレーゼのワインで献杯する
シャトレーゼの創業者で会長がご逝去される
2024年8月、お菓子製造販売会社、シャトレーゼの創業者で会長だった齊藤寛氏が亡くなった。御年90歳。
シャトレーゼが店舗を拡大し始めた頃、僕の田舎にも進出してきてよく口にする機会があったのだが、正直に言うと「安いけれどスィーツと名乗れる最低限の品質」といった感が否めず、お菓子あるわよー、わーい、からのシャトレーゼぇ……↓↓みたいな感じだった。
ところが今はどうかと言えば、この美味しさでこの値段?と文字通り舌を巻くような商品がずらっと並ぶ、誰もが知るお店となっている。ファミリーでいつも各店舗はあふれているよね。
これもおそらく齊藤氏の辣腕(らつわん)によるところが多いのだろう。新製品を出す時は必ず自らの舌で確認し、新規店舗を展開する時は斎藤氏が自ら現地で陣頭指揮をとって看板の位置や向きにまで気を配ったというエピソードは、ビジネスニュースなどでよく取り上げられていた。
シャトレーゼの生ワイン
そのシャトレーゼでワインを販売していることはあまり知られてないような気がする。
齊藤氏は山梨の甲府市出身で、シャトレーゼの本社も甲府にある。同じく山梨県にある白州工場は雄大な自然の中にあり、工場見学が人気だそう。氏はワイン造りも手掛けていたぶどう農家の長男で、御父上から「ぶどうのことも忘れるなよ」と常々言われていたそうで、そんな地元愛にあふれる齊藤氏が「うちでもワイン作って売るぞ」と事業展開したのもうなずける。

甲州と輸入ワインを大きめのシャトレーゼ店舗とサブブランドのYASTUDOKIで販売しているそのワインは、ちょっと他とは一線を画したワインとなっている。
樽出し生ワイン
今回は家の近所のシャトレーゼ店舗に赴き撮影の許可を頂きましてからの、こちらがそのワイン販売のコーナーだ。

「樽出し生ワイン」はその名の通り無濾過、無添加の「生ワイン」を樽から直接注ぐスタイル。
ちょっと前までは店内に樽があって直接注いでいるところを見ることができたのだが、今はバックヤードのほうで注ぐようになっている。まぁそっちのほうが衛生的でよいのかもしれない。
見ると、輸入してきたワインを自社のワイナリーに持ち込み国産のぶとうでブレンドしている、とある。
輸入のワインの成分をみると酸化防止剤が必ずと言っていいほど添加されているが、これは流通の段階でワインが酸化、変質させないためには必須と言える添加剤だ。シャトレーゼのワインはその酸化防止剤が使われていない。そのため、樽から注いで二週間が消費期限となる。まさに「生ワイン」だ。
輸送中のコンテナの温度が低温に保たれている必要があるということで、コンテナの温度を上げないため冷蔵の船便か空輸で運んでいるはずだ。
はず、と憶測の域を出ていないのはシャトレーゼがこのワインをどの国からどのように輸入しているか公表していないからに他ならない。
なので憶測するしかないのだが、多分イタリアかスペインあたりから樽ごと空輸し、そこに甲州ぶどうの果汁で再度発酵させているのじゃなないかなぁ……と思うがこれがまったく自信がもてない。というのもありえないくらい安いのだ。
700mlでなんと760円。……安っ!

夢クループのお姉さんでなくとも「やっすぅ~~~っいっ!」と猫なで声が出るレベル。
こんな手間暇かけて販売するとなればこの値段設定は考えられないんだよなぁ。どうなってんだ。
と、謎につつまれた「樽出し生ワイン」。
味のほうだが先出ししておくとこれがめっぽう美味く、それだけは間違いない。美味いんだよこれが。
ワインは樽から専用の瓶に注いでもらう。瓶は初回だけ店から買い求め、次回からはその瓶を持参してお店で渡すと、また新たな瓶に注いでもらう形だ。
僕は最初に瓶を返す時に、そのまま注いでもらうのだろうと思い込んで自宅で瓶を丁寧に洗ってアルコール消毒して持ってきた!と自慢気味に渡したら店員のお姉さんに「新しい瓶にお詰めいたしますね、お預かりした瓶はお店で洗浄しておきますので」とにっこり言われてなかなか恥ずかしい思いをしたなそういえば。

そして今日はメルローとカベルネソーヴィニヨン、それぞれ一瓶ずつ詰めてもらい、そのお供に、これまた美味しいシャトレーゼの「白州名水仕込みテーブルロール」を一緒に購入。これにはキリストさんもにっこりだろう。
撮影した日は暖かかったので店の近くにある公園でいただくことにした。
平日の公園でワインを注ぐ 小くも確かな幸せ

東京は東京でも23区を外れると、都会っぽさが薄れる。さすがに空き地は見当たらないものの、背の高い建物がぐっと減り静かな住宅街が広がるようになる。
そんな住宅街の中にある公園。ここでこの生ワインとロールパンを日中堂々いただく。なんというか贅沢な時間の使い方だなと我ながら思ったり。
ベンチの一画をお借りしましての。ワインとパンをドドンと置く。

ワインを注ぎ、献杯。

あ、なんか片手で持とうとしたらパンの持ち方がハンバーガーを持つキムタクみたいになってんじゃん。
キムタクといえば、SMAP解散時にはその原因となった根源じゃないのかと疑われてなんとなく悪役風味だったけれど、昨今風向きががらっと変わってきて何というかハリーポッターのスネイプ先生みたいな立ち位置になってる気がしない?
実際、テレビ業界の友人達に聞いても彼の評判で悪いものはまったくないって話だしな。旧ジャニーズ問題の後、一時期メディアから姿が見られなくなって令和のキッズたちから「キムタク?あのコンビニ壊しまくる人だよね」とか思われるんじゃないかと心配になったけれど現状そんなこともなく、映画にバラエティに忙しく活躍されているようでなによりだ。
さて、そんなことはどうでもよく。肝心の味わいをお伝えしようかな。
軽やかな味わいとクリアな香り
カベルネソーヴィニヨン。
一口含むとぶどう果汁の香りが鼻から抜けていく。味わいは軽く、どちらかというと香りを楽しむワインかな。これなら肉でも魚でもどんな料理にも合わせることができそう。
だがこの生ワインが本領発揮するのは注いでからだ。
生ワイン、酸化防止剤が添加されていないということは酸化するということです(小泉構文)。
ワイングラスをくるくる回す「スワリング」というやつ、皆さんも一度は見たことあると思うのだがこれはワインに空気を触れさせ風味を引き立たせる飲み方。
このスワリングをして少し置くと、香りと味、両方が一段階ぐっと深みを増すのがわかる。生ワインの真髄とも言える味だろう。
その昔、僕が若気の至りでワインの知識もないくせにくるくる回したところ「これは熟成しているから回しても味は変わらないぞ」と優しく教えてくれた人がいた。僕は今、かの日を思い出しながらくるくるしている。くるくる。だが彼はもうこの世にはおらず、この感動をもうその人に届けることができない。そう思うと寂しいけれど、僕は周りの皆に支えられて元気にくるくるできている。感謝だ。

ワインをちびちびと飲みながら思うこと
今後僕たちは、この美味しい生ワインをこの先ずっと楽しむことができるのだろうか、ということだ。
先にも書いたけれど、この生ワインが事業として大きな売り上げとなっている気がまったくしない。余剰在庫はどこかのレストランに卸すなど工夫をして赤字は回避しているかもしれないけれど、瓶の洗浄や注ぐ手間暇など考えたら厳しいのではないだろうか。
経営的に何かをシュリンクしなければという判断する事態になったらこの生ワインが真っ先に槍玉にあげられそう。「斎藤氏の思い入れがあるから継続していたけれどコレどうなんよ、だってスィーツじゃねーじゃんアルコールじゃん、うちスィーツ屋やぞ?」とか経営会議で凄まれたらどうしようもなさそうな感じがする。
氏が逝去される少し前、さかのぼると1年前くらいからかな、シャトレーゼのよくないニュースがちらほら聞こえていたのは偶然とは思えないんだよね。
常に陣頭指揮をとってきた斎藤氏が健康上の理由で現場から遠のき、結果、氏に頼りっぱなしだった役員達が正しく指揮できず、結果あまりよくない事案が発生しまくっているのではと勘繰ってしまう。
カリスマ経営者、運営者が逝去し、残された不甲斐ない者達によって大きな混乱を招くような事態になった会社や団体は枚挙にいとまがない。マクドナルドも藤田田さんがご逝去された後にだいぶ混乱したしなぁ。他人事ではあるものの、この生ワインの一ファンとしてはやっぱり心配になってしまう。
でも、よい部分は残し、変わるべき部分は時代とニーズの変化に応じて変えて、きびきびと対応できる新体制を敷くことに成功している大手企業もある。「ワシがいなくなったら、こうするんじゃぞ」的な指示を齋藤氏もきっと残してくれているだろう。シャトレーゼには今後もがんばってもらいたいな。
そんなこと考えながらワインを飲んでいると、少し離れたところから「ママー、ぶどうジュース飲みたい」と小さな子供の声が。「あれはね、ジュースじゃないの、違うの、えーとね」と、どうやらママを困らせてしまっているらしいので、ワインを飲み干して帰ることとした。
あと10何年かしたらそこのシャトレーゼで買って、ママと一緒に飲んでおくれ。