1コイン(500円)で熱帯魚水槽は作れるぞ

作るしかない


魚を飼うのはいいぞ

 生まれ育った実家の応接間に水槽がありそこで父親が金魚を育てていたためか、僕も魚を飼うことが今でも好きだ。
 僕も独り暮らししていた時はタナゴの育成に凝ったことがあり、何度か卵の孵化に成功している。タナゴの繁殖はなかなかの高難度なのでちょっとした自慢だ。
 でも引っ越しの時に生体は近くのペットショップに譲って、水槽は処分しちゃったんだよね。水棲生体の移動っておそろしく手間がかかるし、それと一人の時には気にならなかったけれどエアポンプの音ってまぁまぁの雑音なんじゃないか、家人にとってうるさくないだろうか、と気になってしまったり。まぁ要するに諸々面倒くさかったのだと思う。

 だがしかし、よふかしのうた。
 アクアリウムそのものに飽きたのかというとそうでもなく、今でもミニサイズの水槽を育てている。
 大型の水槽ではできないようなこまめな構成の変化が楽しめて、それに丈夫な魚種を選べば犬猫などと違って1週間くらい家を空けても大丈夫なところもマルだ。

 そこで、一から全て揃える前提でミニアクアリウムを、安価にかつ簡単に作る方法を実際にやってみようと思う。


え?500円以内で熱帯魚を飼えだって?……できらぁっ!

 というネットではおなじみのテンションでやってみよう。いわゆるグラスアクアリウムと呼ばれるジャンルなのかな? 魚が生きられる最低限の小さな水槽構成でアクアリウムを楽しむ、ちょっとオシャレな趣味だ。
 実はこのグラスアクアリウム、水槽メイクの初心者でも、1コインで存外なんとかできてしまうものなのだ。

 まず水槽。これはちゃんとしたアクアリウム水槽を用意するとなると、もうそれだけで500円を余裕で超えちゃう。なので代替品を工夫することにする。
 一般の家にあってまぁまぁ水槽の代わりになりそうなものというとこんなところだろうか。

有明の海で育った海苔!

 これを水槽とする。というかもともと水槽だ。水槽を買うとオマケに美味しい味海苔がついてくるのだ。このチョコエッグ的発想をもってすれば、水槽代はこんなの実質ゼロ円であり、異論は認めない。
 この水槽のオマケである海苔は時期的に出回っている新米と一緒に中身を食べることにする。みなさんご存じの通り、海苔ご飯を食べるという工程はボトルアクアリウム制作には欠かせない。……ちと言ってる意味がわからないが。

新米と味付海苔

 家は近くのお米屋さんで食べる分だけ精米してもらっているのだが、そこで丁寧に育てられた新米コシヒカリを精米したものを購入し、そしてすぐに炊く。

精米したての新米コシヒカリとキッコーゴ醤油

 美味いに決まってる。アクアリウムって美味しいよな。……ちと言っている意味がわからないが。

 写真を撮っているとかみさんが「水槽の撮影するとか言ってなかったけ、なんでご飯の写真撮ってんの?」と、いぶかしがるのでと白飯をほおばりながら無表情で「今水槽の写真撮ってるじゃん」と答える。するとかみさんはそれ以上なにも言わないで去った。長年連れ添った結果、なるほどバカの考えることはさっぱりわからんということを学習してもらった結果だ、大変ありがたい。食べ終わったらシールをはがしてよく水洗いしておこう。


水槽の構成物を用意する

ゼオライトと餌

  敷き詰める石はゼオライトにする。ゼオライトとは極小さい穴がたくさん空いた鉱石で、水槽の敷石によく使われる。魚の出すアンモニアなどを分解する微生物がその穴に住み着いて水質を安定する役割を担ってくれる。観賞魚ショップで買うとまぁまぁの値段がするのだが、実は100均の園芸コーナーで買えてしまうのでこれでよしとする。キッチンコーナーでは魚焼きグリルの敷石として売ってるのでどちらでも、といった感じ。
 餌は大きめの100均ならこんな感じの熱帯魚用フレーク餌が売っているのでこれをチョイス。もしなくても金魚用の餌はあると思うのでそちらでOKだ。

研ぎ汁?が透明になるまで洗おう

 観賞魚用ゼオライトではないので水をいれるとこのように濁る。お米を研ぐ要領で、水が透明になるまで根気よく洗おう。だいたい10回も研ぐ?と濁りがなくなる。
 ゼオライトだけでも大丈夫だが、今回は見栄えのために石を入れる。

庭の石を拾ってきた

 これは家の庭にあった那智石っぽい石、今回はこれをインテリアとしていれることにしよう。

注意

海や川、公園など自分の敷地以外で石を拾うことは原則ダメなので気を付けてください!


生体を選ぶ

 熱帯魚ならなんでもいいというわけでは当然なく、ある程度低水温に耐えることができる丈夫な魚種を選ぶ。
 一番メジャーな亜熱帯の小さい魚の代表としてアカヒレが無難なところだが、今回はバルブ系を選んでみた。

ゴールデンバルブとミナミヌマエビ

 このゴールデンバルブ、熱帯魚の中でも屈指の丈夫さをほこっていて、しかも大きさがメダカ程度でグラス飼育には最適だ。1匹の単価はショップで直接購入して持ち帰るなら100円~200円くらい。

 そしてルームメイトにはミナミヌマエビをチョイス。こちらも1匹単価は100円~程度。バルブ系は気性が荒いので同じサイズの別種とは混泳が難しいのだが、エビは水草の中に隠れていることが多く一対一であれば仲良く生活してくれる。

 そしてそんでもってこのミナミヌマエビを選んでいる重要な理由がもう一つある。
 エビが水草につかまっている姿が画像を見るとわかると思うけれど、これはエビを買った時にアクアショップでいただいたものなのだ。
 帰りの時間が少しかかるので水草をわけてもらえないでしょうか、とお願いしてみるとこうして一緒に水草をいれてくれることが多い
 アナカリスはほとんどの観賞魚ショップで置いてある安価な水草。放っておいてももりもり増えるので、お店側も在庫がなくなって困るといった類のものではないのだ。エビがつかまる止まり木(じゃなくて止まり草か)に欲しいとお願いすると、このようなサイズであれば譲ってくれるはずだ。
 エビ用のプラスチックネットを足場として入れてくれるショップもあるのだが、その時は正直にボトルで育てたいのでって言えばまぁいただけるはず、人生にはちょっとした図々しさはあっていいと思うのだ。


いざ水槽へIN

 水はショップでビニール袋にいれてもらった水をそのまま海苔水槽へイン。

やさしく注げばOK

 大きな水槽なら水温と水質をなじませる必要もあるけれどこのサイズならショップの水と一緒に入れればよいのでその必要はない。らくちんだ。
 あとは汲み置きしてお日様の元に1日ほどおいてカルキ抜きした水を少しずつ、海苔水槽に加えていってあげればOKだ。新しく入れる水は海苔水槽の隣において温度を馴染ませておくことを忘れずに。それからあまり水をいれすぎるとエビが勢い余って飛び出すので注意だ。
 なので、飛び出し防止のため蓋をふんわりと乗せておこう(密閉しないように)

 あ、しまった蓋のシール剝がすの忘れてた、けどまぁいいや。

有明産の熱帯魚になってしまった

さてその合計金額は?

 さて、総額が本当にワンコインなのか値段を計算してみると……

①ゴールデンバルブ 100~150円
②ミナミヌマエビ 100~150円
③ゼオライト 100円
④餌 100円
⑤家の庭の石 0円
⑤図々しくいただいてきた水草 0円
⑥美味しくいただいた海苔の器 0円

 生体がそれぞれ150円だったとしてもちょうど500円だ。やったぜ。もしゴールデンバルブが高かった場合、少なくともアカヒレだったら多分どこのショップでも100円のはずなので1コインにこだわりたい方はそちらをチョイスしていただけばよいのかな?……こだわる必要があるかどうかはわからないけど。


育て方

 では育て方を解説していこう。簡単とはいえグラスアクアリウムならではの注意点もありますゆえ、しっかりチェックしていただきたい。

餌やり

 冬以外だったら1日に1度耳かき一杯程度の餌を入れてあげよう。
 なにせ泳ぐスペースなんてあってなきのようなものだから、ほんの少しの餌で大丈夫。もし餌やり忘れたとしても、バルブもエビも水草の芽をついばんでしのいでくれる。そのあたりはとっても気楽だ。

水換え

 1日天日干しした水を三分の二くらい入れ替えてあげよう。
 夏場は1~2週間に一度くらい、冬場は1か月に一度くらい。新しい水の温度が元の水と同じになるよう、ボトルの隣に置いて水温をならすことが大事だ。
 ボトルアクアリウムなら、ポンプで水を吸い出したりしなくてもジャバーっと流してしまえばいいので恐ろしく楽だ。魚も一緒に流さないように注意、排水口にネットを張っておくと安心なのでおすすめ。

温度管理

 注意しなくてはならないのは水温。水槽の容量が小さいゆえ外気の温度に影響されやすい。
 夏場は直射日光が当たるような場所に放置するとバルブはともかくエビがもたないので注意。逆に冬は水温が下がり過ぎないように、暖房が入るリビングなどに置いてあげよう。
 ノートPCの排熱される場所に置くと冬でもまぁまぁ元気に泳ぐ姿が楽しめるのでオススメだ。

水槽の大掃除

 半年~1年くらいを目途に、水槽についた苔を取り除き、ゼオライトを三分の二程度新しいものに交換しよう。

①小さなコップに海苔水槽の水と一緒に水草、エビ、魚、スプーン一杯くらいゼオライトを移す
②残ったゼオライトを取り除き、水槽を洗って新しいゼオライト(洗ったもの)を減らした分だけいれる
③天日干しした水と、コップの水を入れ魚を戻す(水の温度を合わせることを忘れずに


 こんなプロセスになるだろうか。経験上、このタイミングでエビが水質変化に耐えられずポックリ逝ってしまうことが多いので慎重に丁寧に掃除しよう。

 ※ゼオライトを少し残すのは、そこにいるバクテリアも一緒に引っ越すため。


そして一年経つとこうなる

すっかり苔に覆われた水槽と育った水草

 本来であればここまで苔に覆われる前に水槽掃除をするのだが、これだけ雑に扱っても大丈夫だよという証拠になるかなと思い水換えだけでここまで苔を育てて?みた。
 いただいたアナカリスがこんなに大きくなり、ゴールデンバルブは元気だ。エビ君は……残念ながら春先に旅立ってしまって今は2代目が住んでいる。

 アナカリスは根がなくても水に栄養があればこんなに育ってしまう。
 日本では外来種扱いなので河川に放つのはやめよう(とはいえもう日本中でバンバン繁茂しちゃってるけどね)。

 頭のほうから適当な長さに切って、掃除して水を入れ替えた水槽に戻してやる。
 水槽の掃除の時、元の水とゼオライトを全部捨てずに少しだけ戻してあげると水槽内バクテリアがまたバランスよく育つので、この作業を忘れないようにしよう。

 バルブは丁寧に育てれば7年ほど、エビは3年ほど生きる。
 作業用のPCの隣に置いておくと元気に泳ぐその姿が心の栄養になって本当に安らぐので日々疲れている人へオススメのヒーリングアイテムだ。

 費用たったの500円、時間は半日もあれば余裕で完成する、おそらく最小単位のアクアリウム。お子さんの自由研究などにもうってつけ、興味あるかたはぜひトライしてみてください。