おそらく世界一簡単な本格燻製ベーコンの作り方
「加工肉は身体によくない」
みなさん一度はそんな煽りワードを聞いたことないだろうか。ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉は塩分だったり添加物だったり脂だったりが身体によくないらしいというアレだ。
身体によくないと言われているものをバクバク食べちゃうほど心胆が強いか?と言われればそんなことない僕である。正確に言うとそれを無視してバクバクと加工肉をむさぼれるほど若くないってことなのだろう。寂しい。
だがその寂しさを乗り越えねばなるまい。だってベーコンもソーセージも美味ぇもんよ。
だったら自分でベーコンなりソーセージなりを、添加物無しの塩分控えめの、世間様に堂々と顔向けできるような立派な加工肉を作ってしまおうではないか、というのが今回の趣旨でございます。
食品メーカーは日持ちするように、また味の安定のために添加物や保存料を使用するわけだけれど、個人で作って個人で食べる場合そんな心配は必要ない。
塩分もより多くの消費者の嗜好に合うよう、売り上げが最大になるように調整していると思うのだが、これも好みでいくらでも下方調整が可能だ。したがって、
添加物は使用せず、塩も肉の味を最大に引き出す好みの量
で作ってまいろうかと存じまする。
ベーコンの定義を確認する
そもそもベーコンの生い立ちというものが肉を塩漬けにして長期保存したことが発祥というか起源というかそんな感じらしい。その際火事になって偶然燻(いぶ)したとかなんとか。海賊が長い航海中に肉を長持ちさせるために塩漬けにしたとことが起源とかなんとか、あてにならんと話題のgoogleさん家のサーチAIがそう言っておりまして。だがはっきりと「これがベーコン伝統の作り方」なんて記述は見当たらないので「塩漬け肉を燻製したもの」と、してよいかのかな、と思う。
だってこちとらうっかり火事起こして燻(いぶ)すわけにもいかない。また海賊ジョニーデップじゃあるまいし帆船で海に繰りだりたりしないので、そこは冷蔵やら加熱やらは現代のテクノロジーでなんとかしようとオーランドブルームは思うのだった(なにそれ)。
家庭でベーコンを手作りするレシピを確認する
各家庭、レシピや流儀はいろいろあるのだろうけれど、ネットでざっくりまとめると
・肉を塩漬けにする(1日)
・ソミュール液につける(5日)
・水で塩抜きする(3時間)
・冷蔵庫で干して水分を抜く(1日)
・スモーカーで燻す(4時間)
という工程らしい。
……8日!?
「よーし、じゃあ今日はパパがベーコン作っちゃうぞ~!」と宣言してから8日後にやっと出来るってことか。申し訳ないがパパ、8日後には家族全員がベーコンなんて忘れてメンチカツ食べたくなってるぞ多分という、それくらの日数だ。
それにしてもそんなに時間かかるものなんだなぁ、ベーコン作りって。実際、日本の小さなハム工房の工程をいくつか調べてみたとことろ、なんなら塩漬けや熟成にもっと日数をかけている工房もあるくらいだ。
8日のほとんどが待ち時間ではあるのだが……これもうちょっとならんかなぁという気持ちが強いので、作業工程を因数分解して短縮を試みてみたい気持ち。
1番時間のかかる「ソミュール液に漬ける」だが、その要点は
・風味と塩味を肉にしみこませる
・肉を熟成させる
・肉に風味をつける
この3点にあり、そして「干して水分を抜く」は水分が多いと燻製した時に食材の表面に水分が酸味やえぐみ、苦みを出してしまうのでそれを防ぐ意味があるようだ。
なるほど、では「塩気が肉に浸み込んで、熟成されていて、水分がほどよく抜けていること」という条件にマッチさえしていれば、なにも何日もかけずともよいと屁理屈がまかり通る気がする。
そのの条件を満たす調味料が我が国にはある
塩、熟成と聞けばまず思いつくのが「塩麹」だ。
麹。読めるけどいざ書けと言われると確実にまごつく漢字だよなでお馴染みの「麹」だ。
塩麹なら、肉の厚さにもよるだろうが漬け込んで熟成させるに5日もいらない、せいぜい1日~多くて2日だ。そう、ソミュールなどというロシアのロケットの名前みたいなオシャンだけれど熟成に何日も必要な無能極まりない液に代わる、伝統の調味料がわーくに(我が国)日本にはある。
塩麹、ベーコン、手作りでレシピを検索するとこんな具合でちらほらと見つけることができる。
だが「干して乾燥させる」の工程を省いているレシピが多いみたいで、これは乾燥させる必要がない、というより「塩麹も美味しいから一緒に燻製して食べるでいいじゃん」といったニュアンスがあるような気がする。
だがちゃんと乾燥するレシピを記事にしている人もいるし、省くと乾燥せずしてベーコンと呼べるか?とゴア・ヴァービンスキー(パイレーツオブカリビアンの監督)に怒られてしまいそうだし(なにそれ)できればきちんと乾燥工程はなぞりたい。1日は乾燥に割くかなぁと思っていたところに、さすがわーくに(我が国)と言わんがばかリの塩麹を発見するにいたるのだ。
マルコメ:プラス糀 生塩糀パウダー
麹の字が「糀」となっておりこだわりを感じるこのパウダー状態の塩麹は「まぶして5分やわらかジューシー」とあって、ホントか?すげぇぞマルコメ!
いつも米を買わせていただいている米屋が手作り塩麹を置いてくれているのでそれを買い求めて、その帰り道に近所のスーパーで見つけてしまったのだ。なんだよもう。それ早く言ってよぉ、と心の松重豊さんがそう言った。
万能調味料の生塩糀を、さらに使いやすくしたパウダータイプです。従来品「塩こうじ」と比較して漬け時間は半分。お肉にまぶして5分で、やわらかジューシーな仕上がりに。万能調味料が倍速で料理の幅を広げます。
とあり、なんと漬け込む時間が半分になるとな。
どういった理屈で半分になるのかな……あれか、糠(ぬか)漬けの「浸透圧の働きで野菜の水分が外へ出て糠の栄養素が野菜へ入る」と同じ構造かもしれない。いつかマルコメさんに聞いてみたいな、などと思いつつもしそうであればこれが肉の水分をスポンジのごとく吸水してくれるだろうと推察できる。エウレェカ!
ではこの塩麹パウダーをもって、ソミュール液漬け込みと乾燥を合わせた工程、としてみたいと思う。
THERMOSのイージースモーカーがイージーすぎる
さて、ここで問題になってくるのが燻製する方法。広い庭付き一軒家などというブルジョワジーな住宅環境なら煙をモンワカとまき散らしてよいけれど、マンション住まいだったりするとそうもいかない。そこでこれだ。
このサーモスのイージースモーカーは他の段ボール燻製器など違い、密閉性が驚くほど高く燻煙がほとんど外へ漏れないのだ。そのあたりはさすが「魔法びんのパイオニアとして世界120ヵ国で愛される存在(公式HP)」といったところかもしれない。魔法びんって令和のキッズに優しくないワードだけれど公式がこう言っているので仕方ないじゃないか、令和キッズならアレクサなりシリなりに「魔法びんってなんだよ!」と聞いてくれ。
マンションの中でも余裕で燻製できるこの魔法の器、僕の衝動買いによって迎えられたのだがこれが正解of正解で、燻製だけでなく焼き芋や焼きトウモロコシも美味しく焼けるのでたいそう重宝している。この手の色物キッチン器具はまぁまぁ埃をかぶりがちであるけれど(ホットサンドメーカーとかな)我が家での稼働率は高めである。
構造は保温する部分とチップを燻煙する部分の二層にわかれていて、燻煙する部分をコンロにかけてチップを燻(いぶ)し、コンロからそれを外して保温する部分と合体させ、余熱で加熱するとともにチップから煙が出なくなるまでゆっくり時間をかけて冷ます、という使い方をする。
先にも書いた通り密閉性が高く、キッチンで燻製チップを加熱していても煙はほぼ漏れない。火にかけている間は少しだけ燻製の香りがするものの部屋にそれが残ったりはしないのだ。
実際に作っているところを見ていただいたほうが早いかな、ではさっそくやってみよう。
肉の下ごしらえをする
お肉はこいつ、肉のハナマサが取り扱っている伊藤ハムのフランス産の豚バラ肉にしてみる。伊藤ハムが卸しているかもしくは現地で生産しているのか……とにかく味と値段のバランスが抜群によい豚肉だ。
これに生塩糀パウダーを振っていく。商品名に「塩」とあるし白い粉なので塩気もそれなりにありそうだけれど、これが見た目ほど塩味がない……というか成分表を見ると麹の割合のほうが多い。比べて昆布茶などは成分表の一番最初に「塩」が来るのでいつも「お前、茶じゃねーじゃん塩じゃん」と揶揄される昆布茶は見習ったほうがいいな。肉に塩を刷り込むような感覚でいると味が薄くなってしまうし、なにより肉の水分を吸わせるという役目があるのでここは大胆に摺りこんでOKだ。
ラップをして冷蔵庫で1日置く。試したことはないけれど半日とかでもそこそこ熟成できるような気もするな。肉を冷蔵庫から出したら余分な麹パウダーをキッチンペーパーでよくふき取る。
熟成が終わったらいよいよ燻製だ。
いざいざ燻(いぶ)す
スモーカーに焦げ付き防止のためアルミホイルを敷き、燻製のチップを一握り程度入れたらさらにアルミホイルをふんわりとかぶせる。これは肉が加熱されると脂と水分ががポタポタと落ちてくるので、チップをそれから守るためだ。
燻製用のチップはお好みで、肉何グラムにチップ何グラムとか決まっているわけでもなく、だいたい一掴み程度でよい感じ、それをアルミホイルの上に敷く。
肉をセットし、コンロに乗せる。あ、イージースモーカーはIHには非対応みたいなので注意ね。
火は弱火。このまま30分ほど煙で燻す。
この30分という時間だけれど必ずその時間じゃないとダメというものではない。肉質、肉の厚さ、夏か冬か、そして弱火と一言で言っても火力がコンロによってまちまちなので、結果加熱時間が各家庭ごとに違ってくると思う。こればっかりは各位で試して最適値を見つけ出してもらうしかないかなぁ……「塩少々ってなんだよ、具体的に量を言えよ俺に失敗させるなよ!」と荒ぶる料理嫌いマンにはしんどい試練かもしれないけど。
一つの目安として、スーパーに売っている細長いバラ肉の塊だと、肉の厚さ的に弱火50分~60分くらいがよいかなと思うので参考にしてほしい。
30分経ったらコンロから外して魔法ビンのパイオニアとして120年の歴史を持つサーモスの保温器へパイルダーオン。
そして30分待って……いざオープン!
お届けできないのな残念なくらいのよい香り。
カットしてみるとこんな感じ。いい色じゃないでしょうか。
さて味見してみると……なるほど、塩味は市販のものよりだいぶまろやか、しっかりとした燻味がした美味しいベーコンに仕上がったみたいだ。でも麹パウダーの食感が若干残りそこに少し酸味もある……ような気がする。これは改善要綱としておこう。でも美味しいな。ウィスキーにめちゃくちゃ合う味だ。ビールにも合うとは思うけれどスモーキーな風味同士、ウィスキーやバーボンとの相性のほうがよさそう。
成分的には麹菌と塩だけ、しかも1日半程度の工程で本格燻製ベーコンを作ることには成功した……と思う。
コチニール色素で着色したプレス肉を燻液に浸してパッケージされたものこそがベーコンと認識している人にとってみれば、多分これは「焦げの味がして不味い」と感じるかもしれない。実際焦げ臭いっちゃ焦げ臭いしね。イージースモーカーがまぁまぁのお値段がすることも加えると、このイージースモーカーは万人にお勧めできる品ではない気がする。でも本格スモークの味が好きな人であれば本当におすすめだ。これほど手軽にスモークできる環境は他にないと思うので、ぜひポチってみてください。ちゅるやさんご推薦のスモークチーズも簡単にできるぞ(懐かしいな)。しかも付属の敷石で石焼き芋も美味しく焼けちゃう。これはまた近いうちに何か面白要素を添加して記事にしようと思うのでお楽しみに。
今日のお酒🍺
豚のネック、いわゆる豚トロをベーコンにしてみたのだがこれがいける!
ご覧の通りトースターで自身の脂によってカリカリに揚っていく豚トロベーコンさん。
これがウィスキーに合わないはずがないということで、今回のお酒はこちら。
ジャックダニエル マクラーレン 2024エディション
アメリカのテネシー州にて蒸留されるウィスキー。バーボンではなくウィスキー、という体になっているけれど言うほどウィスキーか?と疑問符がつく、だってお前トウモロコシ使ってんじゃんでお馴染みのジャックダニエルだ。
2023年からF-1マクラーレンのスポンサーになっていて、その記念ラベルということで購入。別にマクラーレン味、というわけじゃない(なにマクラーレン味って)。味わいは普通にジャックダニエルですね。
香りは甘め、でピート香や刺激もおとなしめで全体のバランスがよく、ウィスキー初心者でも飲みやすい。
有名ブランドなのでちょっとしたバーであれば置いてあると思うので味わってみてくださいな。
ボトルで買う必要は……正直ないっちゃないかなぁ、味がブランド負けしているとぼやく人も多いし(僕もその一人だ)どうせ買うなら同じ価格帯のワイルドターキーのほうが普段飲みにはいいんじゃないかな、と個人的には思いますですよ。