「りゅうかくさん飲めたね」が出来たね
ゴホンといえば龍角散。いい薬です……は太田胃散か。龍角散。咳や喉のトラブルによく効く粉の漢方薬だ。
その歴史はたいそう古く、そういや僕の爺ちゃんもバフバフ言いながら飲んでいたなぁと思い出すとともに、僕もやたら喉がガランガランになる歳となる。そして龍角散が常備薬となっているのは必然なのかもしれない。
龍角散はゲェーホエホエホオェってなるじゃん
そんな龍角散だけれど粉の粒子が大変細かい。それを喉に直接効能が届くように水なしで服用するため、川尻こだまのように「ゲェーホエホエホオェ」となりがちだ。
僕は飲み方のコツみたいなものがわかっているのでむせることはなくなったけれど、かみさんが慣れずにゲェーホエホエホオェとなってしまう。
口から龍角散の粉をリバースするその姿は博士コントで爆発したあとの志村けんさんを思わせる。もちろんそんなことをかみさんの前で言いでもしたら怒り心頭の大惨事になるので言わないけど。
そんな理由からかみさんは龍角散は龍角散でも、龍角散ダイレクトのほうを服用している。

甘く味付けされた顆粒物に薬効成分がコーティングされ、お子様やお年寄りにも飲みやすくされている……のだが、お前確かちょっと前まで「クララ」って名前だったろ何しれっと改名転生してんだよ近頃のVtuberかよ感があるでおなじみの龍角散ダイレクトだ。
確かにザ・漢方薬、といった風味の本家龍角散と比べると格段に服用しやすい。家ではいつもミント風味を購入しているけれど清涼感があって漢方というよりのど飴に近い立ち位置かもしれない。
でも高いんだよコイツ
「ダイレクトが切れちゃったから帰りに買ってきて」とかみさんに言われる頻度が高い。1箱に20包しか入ってないから消費スピードも早い。なんやかやで月に2回くらいは買ってる気がする。僕の龍角散は半年くらいは持つのになぁ、なんて思いながら薬局に寄ると「あ、ついでにトイレットペーパーもお願い」と着信がきてあーはいはい、となることが多い。
のど飴みたいな成りをしているけれど医薬品の部類なのでお値段はそこそこする。うちの近所のドラッグストアだとだいたい600円だ。20包入りで1日に6回服用とのことなので、1日のランニングコスト600÷20×6=180円ってことになる。ビール500缶より安いっちゃ安いのだが……
本家龍角散、缶に入ったタイプのミドルサイズが43グラムの値段が同じく店では1300円くらいなので1グラム30円ほど。1回の服用が0.3グラム、なので1回10円とうことになる。服用回数は1日に6回と同じなので1日のコストは60円だ。

なんというかシャンパンのドンペリ・ロゼが5万円くらいなのに「ピンドンタワ~入りましたぁ~!」みたいな店で何十万もする、みたいなもんじゃないのか。しかもピンドンて言うほど美味くねーし。龍角散ダイレクトもそんな立ち位置なのだろうかと妄想が止まらなくなってイライラしてきた。
なら成分はどうだろうか
値段は3倍ですよ。界王拳ならどうにかなっちまう倍率だぞ。成分も3べぇじゃないと納得いかない価格差なんだけれど、ちょいとオリジナルとダイレクトの成分を比べてみましょうかね。
成分 | オリジナル | ダイレクト |
---|---|---|
キキョウ末 | 70mg | 84.0mg |
キョウニン末 | 5.0mg | 15.0mg |
セネガ末 | 3.0mg | 4.2mg |
カンゾウ末 | 50mg | 102.0mg |
ニンジン末 | ─ | 84.0mg |
アセンヤク末 | ─ | 8.4mg |
とある。お、成分的には3倍とはいかないまでも2倍くらいはあるっぽい。そしてオリジナルにはなくダイレクトに配合されている成分が2種あるようだ。
「ニンジン末」
強壮強精・消化促進・下痢止め・精神安定・血糖降下・強心・保温・抗疲労
「アセンヤク末」
下痢止め、止血、整腸作用
とある。え?喉の症状にまったく関係ない効能ばかりじゃん。でも入っているということは何らかの役割があるということなんだろう。
お、お前……ただのラム……ネ?
そしてダイレクトがダイレクトたるあの甘い粒々は添加物として表記されている。それがこちら。
バレイショデンプン
無水ケイ酸
エリスリトール
クエン酸
他はメントールと香料、着色料。
バレイショデンプンはいわゆる片栗粉、無水ケイ酸は粒がくっつかないようにする役割、エリスリトールは人工甘味料、クエン酸は言うまでもなく酸っぱい成分だ。

正体はラムネ
ラムネだわこれ。やだもぅ~あんたいい加減にしなさいよぉ!と心の中のマツコデラックスがそう叫ぶ。
ちなみに森永のラムネの成分が、
ぶどう糖
タピオカでん粉
ミルクカルシウム/酸味料、乳化剤、香料
とある。森永ラムネと同じ、基材となるデンプンに甘味成分と酸味を加えている点でもう龍角散ダイレクトもラムネだよな。龍角散ラムネ。森永のラムネはブドウ糖なのにダイレクトのほうは人工甘味料ってのがまたアレだし。
この龍角散ダイレクト、実はたいしたことしてないんじゃなかろうか。
だってラムネの粒に龍角散の成分を練りこんでるだけだもん。薬効成分が元祖の倍近い量なのも、練りこまれるために薬効成分の効きが悪いからオリジナルより多めになってんじゃねーのという疑惑すら持ち上がる。
どないよ株式会社龍角散さん。
であれば……作れるんじゃね?
ということはアレだ、同じようにラムネを基材にして龍角散オリジナルの粉をいい感じにまぶせば結果的にダイレクトと同じってことになりはしないか。というか絶対そうだ。
薬事法的に大丈夫だろうかと思って調べてみると「子ども向けには、粉薬をゼリー・ジャム・アイス・粉末ジュースなどと混ぜて服用する工夫することを推奨する」ということで大丈夫らしい。
それにその龍角散株式会社さまが「おくすり飲めたね」なる、お薬服用ゼリーを出してるじゃないか。りゅうかくさん飲めたね、があったところでよもや文句は言うまいよ。

よし、理論武装(クソガキ屁理屈)は済んだ。なら作ってみましょうかね、といった流れになるのは居酒屋なかおちでは至極当たり前といえよう、といったところでさっそく手はずを整えていこう。
まず龍角散ダイレクトをみてみよう。いつもそのまま口にダイレクトにいれるのでその粒をまじまじと見たことなかったけれど、こんな感じのようだ。

ふむふむ、見た目からは漢方薬っぽさは感じられず、匂いも……こちらも漢方の匂いはしない。ミント味のお菓子のような香りがする。
さてこれに似たような形状のラムネ菓子を探さなければならないが……
つぶつぶのラムネ菓子があった気がする
昭和の時代、粉というか小さい粒というかそんな形状のラムネっぽい駄菓子があった気がする。なんかストローで吸うんじゃなかったっけ?そんな記憶がある。
とはいえ古き良き駄菓子屋なんて全国的に絶滅危惧種でレッドリストに載るレベルで見当たらないのだが、ドン・キホーテにやたら充実した駄菓子コーナーなかったっけ、と探してみたところあったあった。

ちょっと出しちゃ舐めて出しちゃ舐めて、でだいぶ長持ちするのでタイパは抜群によかったよなコレ。きなこ棒とか一撃でなくなっちゃうものより長持ちタイプの粉菓子のほうが子供たちには人気があったと記憶している。
さて、では色が相対的に映えるようピンク(イチゴ)を隣に盛ってみると……

こ、これはっ!
お、同じだぞ!この粒度たるやまったくもって龍角散ダイレクトじゃん!
あ!仕事以外で「粒度」って初めて使った気がする!いやいや何言ってんだ僕!興奮して思考が落ち着かない!
指ざわりもまったくと言っていいほど同じだ。
いやー驚いた。これ間違いなく同じ製法で作られてるだろ、こんなことあるんだな。
もしかするとこの龍角散ダイレクト、マルタ食品がOEM生産してんじゃないの?まである。
こいつは見つけてしまったかもしれない。はやる気持ちをおさえつつ、龍角散オリジナルとさっそく配合してみよう。
ダイレクトと同じ量を正確に測る
龍角散ダイレクトの一包と同じ量のフルーツサワーを用意する。龍角散の粉は、まぁこの量であったら誤差の範囲ではないだろうか。

こいつを丁寧に混ぜてみるとこんな感じ。

ちょっと白っぽくなってしまうのはまぁ仕方ないか。と、期待に胸膨らませて調合していると、かみさんが
「私、そんなの飲まないからね」
と横目で見ながらそう言放った。
……そう、その瞬間、
「友よ 明日のない星と知っても やはり守って戦うのだ」
という類の戦いになってしまったのだ。いや、というか最初から
「友よ 明日のない星と知るから たったひとりで戦うのだ」
そういう類の戦いだよなーとは思っていた。ああ友よ、僕は最初から独りだったのだ。
さて、気を取り直して。たった一人で作り上げたこの手作り龍角散ダイレクトをいざ服用してみよう。
あまっ!すっぱー…!?…にがっ!
見出しに書いた通りの味だ。

あまっ!すっぱー…!?…にがっ! である。
最初に来る味覚はまず「甘さ」で、その直後に「酸っぱい」がやってくる。その酸味の去り際に「ワイやで!」と言わんがばかりに龍角散の苦さがほとばしる。
あーなんて言えばいいのかな、普通に龍角散の粉を喉の奥で飲むよりもはるかに苦いの!フルーツサワーの甘味と酸味がが龍角散の苦みを見事に引き立てているわ山岡さん!って感じ。
スイカに塩をふって甘味を引き出す、の真裏を行く効果が出まくってる気がする。だが……
ゲェーホエホエホオェってならない!
龍角散の粉が喉の奥でもわもわと舞う感覚がほとんどない。フルーツサワーの粒と一緒に服用することで緩和されているからだろうか。
そうであれば、細かい粒子の龍角散がフルーツサワーの粒に吸収されてしまって素のままで飲むよりも効能が落ちている可能性がなくもない。が、これだけ飲みやすくなっていれば少々効能が減少してもよいかもしれない。
どちらかと言えばこちらのほうがより龍角散的にダイレクトだ。漢方味がすごい。これに比べたら正規品はインダイレクトだろ。
ダイレクト?贅沢な名だね。今日からお前は龍角散インダイレクトだよ、と巨匠宮崎駿が言うくらいダイレクトだ。
だが。「龍角散ダイレクト・フルーツサワー味」の完成を見た。やったぜ。
龍角散ダイレクト・コーラ味
よし、どんどんいってみよう。
同じく駄菓子コーナーにあった粉ジュース。今回はこちらも重曹と砂糖、酸味料で構成されているので成分的にはだいたいラムネ菓子と言ってよさそうだ。

子供の頃は棒付きのペロペロ飴に粉をまぶしながら食べてた記憶がある。
粒はフルーツサワーよりも若干細かいようだ。
こちらも同じようにまぜまぜして……

さわやかテイスティ、I Feel 龍角散。
うむ。やっぱ苦ぇ!
恐ろしやドラゴンズ・ホーン・パウダー。その苦さ龍角散を直訳してみたくなる後味だ。
だがこちらもゲェーホエホエホオェってならない点は同じ。それを我慢すれば十分に実用に耐える粉具合だ。
これはいい流れだ、じゃんじゃんいこう。
爆誕、龍角散ダイレクト・コンソメ味!
こんな企画やろうと思ってんだよね、と長い付き合いの友人(3D背景デザイナー)に話してみたところ「あ、私その手の甘いのダメなんですよね、塩っけのあるものとかできません?」と、よけいなありがたいアイディアをいただいたので「コンソメ味」を試してみたい。

このコンソメ顆粒も粒の大きさが龍角散ダイレクトのそれと近いんだよな、もしかすると顆粒にする製法って確立されていてみんなその作り方で作ってるのかもしれない。

これも龍角散のあまり白さが目立たない混ざり加減だ。
ポテトチップスのコンソメ味もあることだし、これは美味しいまであるのではないだろうか。期待しつつ試食する。違った、試食ではなくお薬の服用だ、お忘れかもしれないがあくまで主役は龍角散だからね。
あーコンソメーパンチ、それからーしょっぱい。からの……やっぱり苦ぇ!
でも一番苦みと融和している感じがする。甘味と苦みだと苦みが際立つけれど、旨味と苦みの場合は苦みが旨味を引き立たせる……と言うとちょっと言い過ぎだが、少なくとも甘味と比べるとだいぶいい。こんな調味料が東南アジアのどこかにあってもおかしくないような、そんな風味に仕上がった。
だが致命的に塩辛い。
なぜならコンソメ顆粒だからだ。味の素から塩無しのコンソメ顆粒出してくれないかなぁ。いや、これは龍角散と合わせるというふざけたことをする前から思ってたんだけどね。塩気はいらない、旨味だけ足したいことってあるじゃない。他のメーカーは出してくれているので検討いただきたいな。
りゅうかくさん飲めたね
どうやっても消せぬ龍角散の存在感。まぁ漢方だしなぁ薬草を粉末にして喉にダイレクトにぶちまけるわけだから当然と言えば当然なのだが、よく考えると龍角散ダイレクトってその苦みをあまり感じさせないような製法をとっているのだろうということがわかる。同時に一包の薬量が多くなってしまい小包装の都合上値段が上がってしまうのも致し方ない、ということもわかると言えばわかる。
ならいっそ、龍角散は子供用の服薬ゼリー「おくすり飲めたね」を販売している流れで「りゅうかくさん飲めたね」を出してくればよいのでは、という結論を強引に出しておこうと思う。
いや、出せばホントに売れると思うけれどね。ランニングコスト的には抜群だ。

お遊びでパッケージデザインも起こしてもらった(笑。あんまり完成度高すぎると龍角散の人に怒られそうなので、よく見ると雑な作りというか素人っぽくしてとお願いしたのだが、それがかえって難しかったとのこと。そんなものかもね。
粉薬と言えば薬包だよね
そして包装だけれど、ここは昭和生まれの人には記憶にあるであろう「薬包紙」でありたい。


いやーこの薬包にお世話になった世代は見ただけで口の中が苦くなるのではなかろうか。
でも安心してください、中身は「りゅうかくさん飲めたね」なので甘くて酸っぱくて美味しい。
コンソメ味なら、旨味たっぷりで美味しい、だな。